ピラミッドは現代でも作れない?建設方法の謎と費用試算を整理

ピラミッドについての記事のイメージ画像トピック
ピラミッドについての記事のイメージ画像

「ピラミッドは現代の技術でも作れない」という話を聞いたことはありませんか。古代の大規模な建造物には驚かされますが、当時の施工手順がすべて分かっていないことと、現代に同じ形の建物を建設できないことは、別の問題です。

この記事では、ギザのクフ王の大ピラミッドを中心に、遺跡の説明、現代工法による建設計画、近年の研究を分けて紹介します。宇宙人や超能力などの説明を、確認された建設方法として扱うことはしません。

「作れない」と言う前に三つの問いを分ける

問い何を確かめる必要があるか
古代の人々がどう建てたか当時の道具、輸送、施工手順についての考古学的な証拠
現代工法で同じ規模・形を建てられるか立地、地盤、材料、工法、施工精度などの設計条件
古代と同じ条件で完全に再現できるか使える道具や人員など、何を同じ条件とするかの定義

例えば、「現代の重機を使った計画」と「古代の道具だけで当時の手順を再現する実験」は比較する条件が違います。また、技術的な計画が成立するかという問いに、費用や土地の確保という別の条件が加わることもあります。これらを一緒にすると、「難しい」「高い」「不明」をすべて「不可能」に置き換えてしまいます。

クフ王の大ピラミッドについて分かっていること

エジプト観光・考古省は、大ピラミッドをクフ王の墓として紹介し、建設当初の高さを146.5メートルと説明しています。石灰岩を用い、外側を覆う良質な石材はトゥラから船で運ばれたとしています。一方、建設方法の全体が完全に確定しているわけではないことも明記しています。

ここで区別したいのは、「何も分かっていない」という状態と、「複数の手掛かりはあるが、すべての工程を確定できない」という状態です。素材や輸送についての説明があっても、それだけで採石から最上部への据え付けまでの全手順が解明されたことにはなりません。

大林組の「1,250億円・5年」は1978年の計画

大林組の『季刊大林』創刊号「ピラミッド」(1978年発行)には、現代工法でクフ王型の大ピラミッドを建設する誌上の計画が掲載されています。総工費1,250億円、工期5年という数字は、この計画に示された試算です。

計画には、ギザの同じ場所を想定し、機械を日本から運び、現地で施工作業の人員を確保するなどの前提があります。石材の採石、検査、運搬、据え付けを分け、斜路を使う施工も検討されています。これは実際の完成工事の記録ではなく、条件を置いた建設計画として読む必要があります。

したがって、この数字を「今も1,250億円あれば完成する」「どの工法でも最低5年かかる」という意味で使うことはできません。現在の建設費や工期を知るには、価格、人員、設備、立地などの条件を改めて設定し、試算し直す必要があります。

2024年の研究は、輸送路を考える手掛かり

Ghoneimらが2024年に発表した研究は、レーダー衛星画像、地球物理探査、地層のコア試料を使い、ピラミッド群の近くに、現在は失われたナイル川の支流の痕跡を調べています。研究者はこの「アハラマト支流」が、建設時に人や資材を運ぶ水路として役割を果たした可能性を示しています。

これは古い地形や輸送の条件を理解する手掛かりです。ただし、川の痕跡の発見だけで、石を高く積み上げた具体的な装置や全工程が証明されたわけではありません。研究が扱った問いと、まだ答えていない問いを分けて読むことが大切です。

不思議を楽しみながら、説明の根拠を確かめる

巨大な形や古代の技術に神秘を感じることと、ある建設説を事実として採用することは区別できます。「解明されていない部分がある」だけでは、宇宙人、霊的な力、失われた万能技術など、特定の説を証明したことにはなりません。

気になる記事や動画を見たら、対象がどのピラミッドか、資料がいつのものか、数字にはどの前提があるかを確かめてみてください。最後に、「発見された証拠」「研究者の推定」「発信者の想像」を別々にメモすると、古代への驚きを保ちながら情報を整理できます。

参考資料

エジプト観光・考古省:The Great Pyramid。遺跡の概要と建設方法に関する説明。

大林組:クフ王型大ピラミッド建設計画。1978年発行の『季刊大林』創刊号に掲載された計画のダイジェスト。

Ghoneimほか(2024):The Egyptian pyramid chain was built along the now abandoned Ahramat Nile Branch。Communications Earth & Environment掲載論文。

タイトルとURLをコピーしました